多様なジェンダーと性の健康(パネルディスカッション)
多様なジェンダー・性自認・性的指向をもつ人たち/出生時の性別と異なる性別で生活する人たち、異なる性別を経験する人たちが直面する問題を中心に、性的マイノリティの性の健康について考えます。
各話題提供後クロストーク
- 浅沼智也(TRanS共同代表)
「GID/TGの医療アクセスの現状調査から」 - ジャンジ/荒木順(パフォーマンスアーティスト/NPO法人akta/元・「akta」センター長)
「居場所をつくる」 - 砂川秀樹(文化人類学者/レインボーアライアンス沖縄代表)
「セックスワーカーの調査から」 - 畑野とまと(トランスジェンダー活動家・SWASHメンバー)
「日本におけるトランスジェンダーの性風俗の移り変わり」 - 宮田りりぃ(MASH大阪 スタッフ/公益財団法人エイズ予防財団 リサーチ・レジデント)
「コミュニティセンターdistaにおけるトランスジェンダーのための取り組み」
【申込先】genderdiversitysh☆gmail.com(☆を@に変えてください)
詳細は、https://www.facebook.com/genderdiversitySH/
開催リポート
<各パネラーからの報告>
浅沼智也さん(TRanS共同代表)
Webアンケート「GID/TG の医療アクセスの現状調査から」(期間:2020/5/1〜5/21 有効回答数:484件)についての報告。回答者は、FtM(トランス男性)46.7%、MtF(トランス女性)31%。「風邪、怪我、体調不良時に医療機関の受診をためらったことがあるか」という質問に対し「ある」が48.1%、「医療機関での受診時に嫌な体験をしたことがあるか」の質問へは、約半数が「ある」と回答。「受診時に医療従事者に配慮してほしいこと」約5割の方が問診票に男女のみならず「その他」を入れてほしい、「性別を何度も確認しないで欲しい」が多かった。
ジャンジ/荒木順さん(パフォーマンスアーティスト/NPO 法人 akta/元・「akta」センター長)
トランスジェンダー、GID、ノンバイナリー、Xジェンダーの人たちにとっての安心安全な場所について。現在あるLGBT関連のセンターの紹介のあと、ジャンジさんと浅沼さんが企画し、コミュニティセンターaktaで開催したトランスジェンダーの多様性を知ってもらうための企画の報告。また、安心安全な居場所として、「見た目で性別やセクシャリティを決めつけられり、コメントされない、一人一人違うことが尊重される」対応と、正しい情報・知識の大切さについて。
砂川秀樹(文化人類学者/レインボーアライアンス沖縄代表)
MSM(男性と性行為のある男性)とトランスジェンダーのセックスワークに関する調査内容。トランスジェンダーのセックスワーカーの在籍する性産業事業者のサイト分析から、女性主体の業者では「本番」行為禁止のため、コンドーム使用について明記できないことの問題を指摘。またトランスジェンダーのインタビューからは、性自認・性別表現などにおいて非常に多様ながら、異性愛の文脈に回収されがち。また、MSMも含めて、HIV陽性になったのちHIVが検出限界値以下になったセックスワーカーの仕事の継続について考える必要があると提言。
畑野とまとさん(トランスジェンダー活動家・SWASH メンバー)
日本におけるトランスジェンダーの性風俗の移り変わり、について。江戸時代の陰間茶屋を、日本における古いトランスジェンダーのセックスワークの形態と位置づけることができる。現代の同ワークに関しては80年代に登場した。90年代、都内の大きな店は4〜5店舗、各店舗多くても10名程度だったが、2020年になると、チェーン店などもあり全国で1000名以上のトランス女性のセックスワーカーが確認される。また、海外からやってきたトランス女性が「立ちんぼ」として働いている状況があるが、状況が把握できていないので、今後の調査が必要ではないか。
宮田りりぃさん(MASH 大阪 スタッフ/公益財団法人エイズ予防財団 リサーチ・レジデント)
コミュニティセンターdista におけるトランスジェンダーのための取り組みの報告。いろんなトランスジェンダーについて安心して話せる場所として、kinky cafeを二ヶ月に一回開催など。MSM対象のエイズ対策とともに、トランスジェンダー対象のエイズ対策に取り組むことが大切。MSMの取り組みには、長年にわたるノウハウ、情報もある。また、トランスジェンダーのための活動をセンターでやると、来場する人たちもトランスジェンダーについて知る機会にもなる。
<企画者(砂川)のまとめ>
浅沼さんの発表からは、医療現場でのトランスジェンダーに関する理解の広がりの必要性を痛感しました。また、ジャンジ/荒木順さんが、自身のaktaでの経験から示された「安心安全な居場所」の条件として提示されたものは具体的でわかりやすく、広く知られて欲しいものです。畑野さんが指摘された、外国人のトランス女性のセックスワーカーが置かれてる状況についての把握は、今後大きな課題だと思いました。宮田さんの発表からは、MSM対象の活動とトランスジェンダー対象の活動をともにやっていくことの意義をあらためて認識しました。それぞれの発表から、「多様なジェンダーと性の健康」について多角的に考えるきっけかけとなりました。
参加人数 25名