イベント情報

マンガはエイズをどう描いてきたか? –『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を中心に

日時
2020年12月3日(木)19:00〜
会場
オンライン
入場
無料

第1部:『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を中心に
第2部:元看護師たちが語る日本のエイズケア病棟のリアル

これまでさまざまな映画や小説がエイズを描いてきましたが、マンガにもエイズを描いた作品があることをご存じでしょうか?2017年にアメリカで出版されたMK・サーウィック『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』は、1990年代にエイズ病棟で看護師を務めた作者の回想録マンガです。

当イベントの第1部では、翻訳出版のためのクラウドファンディングが進行中の本書を中心に、日本や欧米のエイズを描いたマンガを振り返ります。
「マンガの力で日本の医療をわかりやすくする」をモットーに活動する、一般社団法人日本グラフィック・メディスン協会代表で、専修大学文学部英語英米文学科教授の中垣恒太郎さんと、フランス語圏のマンガ「バンド・デシネ」を精力的に紹介する翻訳家で、HIVに感染している女性に恋した男の物語を描いた『青い薬』(青土社)の翻訳も手がける原正人さんをメインスピーカーとして、日本や欧米のエイズを描いたマンガについて、リラックスした雰囲気で参加者のみなさんと一緒に考察していきます。

第2部では、この『テイキング・ターンズ』という作品の作者と同じように、日本で医療の現場に携わってきた3名の看護師の皆さんにお集まりいただき、この作品をご覧いただきながら、皆さんのエイズケア病棟での体験を語っていただきます。第2部の司会はぷれいす東京の生島嗣さんが務めます。

出演者:
【第1部】
中垣恒太郎(一般社団法人日本グラフィック・メディスン協会代表/専修大学文学部教授)
原正人(フランス語翻訳家)

【第2部】
大野 稔子(元 北海道大学病院)
織田 幸子(元 国立病院機構大阪医療センター)
島田 恵(東京都立大学/元 国立国際医療研究センター)
司会:生島 嗣(ぷれいす東京)

【対象】どなたでもご参加いただけます。
【定員】なし
【お申込先】 http://ptix.at/GHwdq2
【お問い合わせ先】 info☆thousandsofbooks.jp(☆を@に変えてください)

開催リポート

12月3日(木)にTOKYO AIDS WEEKSにて、「マンガはエイズをどう描いてきたか?―『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を中心に」というイベントを実施しました。

イベントは2部構成で、第1部では翻訳者の原正人さんと日本グラフィック・メディスン協会代表の中垣恒太郎さんにて、HIV/エイズをテーマにしたマンガを概観し、第2部ではかつて日本のHIV/エイズケア病棟で勤務された経験を持つ織田幸子さん(元 国立病院機構大阪医療センター)、大野稔子さん(元 北海道大学病院)、島田恵さん(東京都立大学/元 国立国際医療研究センター)の3人が、当時の体験を語ってくれました。第2部の司会は、大阪医療センターの医療ソーシャルワーカー岡本学さんが担当しました。

第1部では、特に以下の3つの作品に焦点を当てて紹介しました。
広岡球志『未知への挑戦 AIDS』(毎日新聞社、1987年)、
原作:広河隆一、漫画:三枝義浩『AIDS 少年はなぜ死んだか』(講談社、1993年)、
監修:山本利雄『まんがで読むエイズ』(善本社、1994年)。

そして、翻訳出版をめざしてクラウドファンディングを実施している、『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』について、その内容だけでなく、著者や制作背景についてもたっぷりとご紹介しました。

続いて第2部では、織田さん、大野さん、島田さんが順番に、それぞれどのようなきっかけでHIV/エイズケアに関わることになったのか、今現在は何をされているのかご説明くださり、第1部、とりわけMK・サーウィックの『テイキング・ターンズ』に対する感想を語ってくださいました。

HIV/エイズケアに関わり始めたのは、織田さんが1994~95年、大野さんが1995年、島田さんが1999年とのこと。『テイキング・ターンズ』の著者のMK・サーウィックがHIV/エイズケアに関わっていたのが1994年から2000年なので、皆さん、だいたい同じ時期にお仕事をされていたことになります。一方で、アメリカと日本では状況が相当異なっていたこと、また、1996~97年あたりからHAART療法という多剤併用療法が確立していったこともあり、看護師として『テイキング・ターンズ』に描かれているのとよく似た経験はしているが、必ずしも同じ状況にあったというわけではなかったそうです。

島田さんは今現在大学で看護を教えていらっしゃるということで、『テイキング・ターンズ』という作品のシンプルな絵柄やゆったりとした雰囲気、フキダシ内の手書きのセリフなどに、読み手の想像を促す余白のようなものを感じておられ、教材として可能性があるのではないかと仰っていたのが印象的でした。

その後、患者が抱える家族との葛藤、看護師と患者の関係性、セクシャルマイノリティの患者に対して行ってきた配慮、HIV/エイズに関わることで学んだこと、これからHIV/エイズケアに関わる人に伝えたいことなど、さまざまなトピックについて、経験に基づいた貴重な議論が行われました。印象的だったのは、どなたも病気やセクシュアリティを問わず、ひとりの人として患者と向き合い、一方的なやりとりではなく、対話をしたいと強調されていたことです。

(オンラインにて50名ほどの方にご参加いただきました)

詳細な報告については、クラウドファンディングのTOKYO AIDS WEEKS「マンガはエイズをどう描いてきたか?」イベントレポートをご覧ください。